『価値観』の呪縛
- 小林 紋子
- 2023年11月27日
- 読了時間: 12分
更新日:2024年1月29日
人は、普段『価値観』に基づいて物事を判断しています。
『価値観』とは『思考の基準』になる考えであり、本人にとっては『絶対的存在』。
そこに疑いの余地はありません。何しろ基準ですから。
『価値観』は育った環境やこれまでの経験の中で身に付いたものなどたくさんありますが、どれも「正しい」とか「間違っている」という概念はありません。
問題は、判断基準になっている割に、この『価値観』が人それぞれであることと、いつどんな状況でも正しく働くとは限らないということなんです。

『不合理な信念(irrational beliefs)』
『価値観』は、あなたの考え方に影響を与えます。
そして、時に物事の解釈を歪ませ、偏った考え方をさせることがありますが、そこに気付くのはなかなか至難の業です。
そして、その『価値観』への信仰が強ければ強いほど他の可能性を受け入れることができず、あなた自身や周りの人を苦しめます。
こんな風に、残念な方向に作用してしまっている『強めな価値観』を『不合理な信念(irrational beliefs)』と呼びます。
ちなみに、人と人との『すれ違い』『衝突』を生みだしているのも『価値観』。
詳しくはこちらをご覧ください ⇩⇩⇩
例えばね。
人生は公平であるべき、努力は報われるべき、皆と仲良くすべき、常に成功しなければならない・・・
え? 何がいけないの? ・・・って思いません??
それです🤣🤣🤣
あなたが正しいと信じて疑わないこと。それが『価値観』。
一見「理想的」だったり「もっとも」なことのようにも思えますよね。
ですが、これ、実際にはいくら正しいと固く信じて守っていたところで『実現不可能』だったりします。
もう少し詳しく見ていきましょう。

1. 私はすべての人から好かれ、認められなければならない。
人から好かれたい、認められたいと思うのはみんな一緒です。
ですが、あなたに嫌いな人がいて、批判する人がいるように、当然その逆もあることをお忘れなく。
この思いが強すぎると、陰口を言われては落ち込み、批判されては落ちこみ、次第に自分で自分が嫌になってしまうかもしれません。
その他、こんな考えに縛られていませんか?
・ 良い人だと思われたい
・ 自分のために行動すると自分勝手な人間だと思われる
望むことがそれぞれ違う周りの人全てを満足させることはさすがに難しいですよね。
良かれと思ってやったことが「ただのお節介だった😣」などという残念案件も多々あります。
また、人に尽くすことでしか自分の存在価値を確かめられないと、自分のために時間やお金を使ったり、ゆっくり休みを取ったりすることですら後ろめたくなってしまうかも。
くれぐれも都合良く振り回される人になってしまわないよう、お気を付けくださいね。
【この信念への処方箋】
自分自身を労い、大切にしましょう。
あなたが自己肯定感で満たされ、幸せ一杯なら、人からの評価はあまり気にならなくなります😊
2. 私は常に成功しなければならない
モチベーションを継続する上で大切な『姿勢』ではあります。
但し、こだわりすぎると、どんなに一生懸命頑張っても自分で自分を認めてあげることができず、地位や権力を執着しすぎることにもなりかねません。
似たような信念に、こんなものもあります。
・ デキル人と思われたい
・ 何事も『完璧』にこなしたい
・ ミスをすると自分の評価が下がる、ダメな人だと思われる
パーフェクトな人はいません。
そもそも『完璧』の基準は人それぞれ。
あなたが求める『完璧』は、相手の求めているソレとは違うかもしれません。
完璧≒実は自己満足であることも多いのです。
『完璧』を求めすぎて、いつまでたっても仕事や課題が仕上がらないのでは本末転倒。
反対に「ミスは許されないから、最初からやらない」も残念過ぎますね。
何事もバランスが大事です。
【この信念への処方箋】
『失敗』は上手くいっているうちは気付かない今の自分のウィークポイントにスポットライトが当たった状態。
飛躍するチャンスです。
「ここが注目すべきポイントか」くらいに考えて。
気負い過ぎず、怖れ過ぎずいきましょう。
3. 人生は公平でなければならない。
子どもの頃、望みを何でも叶えてもらえるような環境で育った人は「自分にはやりたいように振舞い、言いたいことを何でも言う権利がある」と思い込みがちになるようです。
もしくは、その反対で不平等な扱いを受けてきたかもしれません。
生まれた国、生まれた家、時代、性別、寿命、持って生まれたもの、後々身に付いた能力、得意なこと、苦手なこと、考え方、求めるもの、望むこと・・・。
一人として同じ人はいません。
差別はなくなってほしいですが、何が公平で、どうなっていると不公平なのか線引きをするのは難しい問題ですね。
平等にあるとすれば、誰もが悩みを持ち、等しく『人生における学びの機会』を与えられているということくらいでしょうか🤔
あなたが羨ましいと思っているあの人と同じもの、同じ境遇を得たからと言って、あなたが幸せになるとは限りません。
【この信念への処方箋】
欲しいものは自分の力(努力)で手に入れるのが満足を得る秘訣です。
4. 常に用心しなくてはならない。
この世は危険な場所で、人には疑ってかかるべきだと考える人は、幼い頃、不安感が強い大人が身近にいたのかもしれません。
あるいは、何かトラウマになるようなきっかけがあって、強迫観念に囚われているのかもしれません。
用心するのに越したことはありませんが、過剰な心配は、何事に対しても行動にストップがかかってしまう原因にもなります。
【この信念への処方箋】
心配しているだけでは前に進めませんから、まず、あなたの心配を裏付ける『証拠』を見つけましょう。
証明するものが特になければ「悪い癖が出たな😅」くらいに流しても良いのでは?
それと、人を信頼することも結構大事なことだったりします。。。
5. 自分の身に起きることは、自分ではどうにもできない。
過度に支配的、もしくは過保護な親に育てられた人によく見られる考え。
子どもが困ったことにならないように、大人が先回りして問題を解決、はたまた「親の言うことを聞きなさい!あなたのために言ってるのよ。」という親心は、時として子どもが『問題の回避力・対処力』を学ぶ弊害になることもあるのです。
この傾向にある人は、何かあると、例え自分に責任がある場合でも「私のせいじゃない」などと人や環境を責めがちで、物事を受け入れることができません。
次のパターンも同じ。
・ 私の不幸はあの人や環境のせいなので、私にはどうすることもできない。
・ 落ち込みやすいのは性格だから仕方がない
・ 怒りっぽい性格は自分でもどうにもならない。だから気にしないでほしい。
例えば、人間関係が上手くいかないとき、相手にも問題はあるかもしれませんが、相手が一向に変わらないことに怒ってばかりいても状況は変わりません。
まず、相手を誤解しているところはないか、勝手な憶測で決めつけているところはないか、自分に正すべきところはないか振り返ってみましょう。
そして、上手くやって行くために今、自分に何ができるのかを考えます。
その上で、相手に変わってほしいところがあるなら『相手に変化が表れるよう』あなた自身が働きかけます。
【この信念への処方箋】
いつまでも同じところで足踏みするのはやめましょう。
視点が変われば今まで見えなかったことが見えてきます。
そして、まず自分が行動すること。
これが、良くない状況や悪循環を抜け出すコツです。
6. 問題があっても、そのうち消えてなくなるだろう。
問題を回避したり、先延ばしにしたり、何事もやり遂げることができず、未完成のまま放っておいたりしがち。
子どもの頃、問題があっても見て見ぬふりをするような大人と接していると、この価値観が形成されやすくなるようです。
こちらも同様。
・ 問題は対処するより回避する方が簡単だ
たまたま上手く問題を回避できたことがあったとしても、似たような問題はまた起こり得るでしょうね。
そのたびに放置し、避け続けますか?
確かに放っておいて良い問題もあれば時間が解決してくれることもあります。
が、放置しておけばその間ずっとその悩みにつきまとわれることにもなります。
その間に問題が大きく膨れ上がってしまう可能性も・・・。
【この信念への処方箋】
面倒なことは早く片付けてしまった方が身のため。
一度乗り越えてしまえば対処する力が身に尽きますよ。
次はもう大丈夫😊
7. 今の自分がこうなのは、これまでの人生のせいだ。
5. 自分の身に起きることは、自分ではどうにもできないのパワーアップバージョン。
この傾向の人は被害者意識が強く、色々なことをやる前から諦めがち。
で、いつでも不平不満を口にする日々。
どんなことがあっても責任回避と自分を正当化することばかりを考え、これまで問題解決を図ろうとしてこなかった可能性があります。
その背景には、過度に支配的、過保護な親に育てられ「自分で考えて行動する経験を奪われてきた」などの過去があるかもしれません。
あるいは、子どもの頃、精神的に大きな打撃を受ける出来事や虐待を経験して、何らかのトラウマを抱えている、という人もいるかも。
具体的な例だとこんな感じ。
・ 親(家計)が厳しくて、進路を自由に決めさせてもらえなかった
・ 結婚して子供ができてから私の時は止まったまま・・・
・ こんなはずじゃなかったのに
そもそも思い通りにならない世の中です。
確かに人は過去や周りの人の影響を受けますが、選択に迫られたとき、実際にそうすることを選んできたのはあなた自身です。
どんな命令(またはアドバイス)にせよ、従うかどうかを決めてきたのもあなた自身。
【この信念への処方箋】
辛いことを周りの人や環境のせいにしてしまえば楽ですが、そこから抜け出すにはあなた自身の脚力が不可欠。
上手くいかなかった原因を次々とこじつけるよりも「どうしたらこれを乗り越えられるのか🤔」ぜひご自身で考えてみてください。
自分の選択に責任を持ちましょう。
そして・・・。
他の誰のものでもない自分の人生をこれからどう歩んでいくのか。
それを決めるのもあなたですよ。
8. みんな同じ行動規範に従うべきだ。
身だしなみや時間管理、マナーを親から厳しくしつけられ、精神的なケアを十分に受けられずに育った人はこの価値観に縛られる可能性があります。
例えば列に並んでいたあなたの前に人が横入りしてきて、カチンときたとします。
そんなあなたには『横入りすべきでない』という信念がある、ということになります。
ですが、実は、そこには、「あなたが並んでいることにその人が気が付かなかった」とか、反対に、「その人が先に列に並んでいた(つもりだった)」ことにあなたが気付かなかった、という意外な事実があったかもしれません。
『ご年配の方には席を譲るべきだ』
こんな信念をお持ちの優しいあなたは席を譲らない若者に腹を立ててしまうかもしれません。
ですが、その人が席を譲れなかったのは、具合が悪かったり、どこか身体を痛めていたりしたのかもしれません。
クタクタに疲れて動けなかったのかもしれません。
あるいは席を譲りたいと思っても、声をかける勇気がなかったのかもしれません。
腹を立てるくらいで済めば問題ないのですが、相手の事情や他の可能性を無視して、自分の正義を押し付け、相手を責め立てるところまで行くのは困ったものです。
【この信念への処方箋】
もちろん守るべきルールはたくさんありますが、イレギュラーなことはどうしても起こります。
あなたの『べき』にそぐわなかった人に突然怒りをぶつけるより先に「何か事情があったのかも🤔」と考えれば「まあ、いっか」と思えることもきっと増えますよ。
9. 人生は退屈で、満たされないものだ。
自分で責任を取る自信がなく、他人頼みの傾向がある人が考えやすい価値観です。
子どもの頃に自立性を発揮する機会を与えられてこなかったのかもしれません。
・ 夫が協力的じゃないから私はやりたいことができない
・ 彼が嫉妬深いから友人と遊びに行けない
【この信念への処方箋 】
あなたが楽しむことと周りの人の事情や環境は関係ありません。
楽しむことに後ろめたさや遠慮、言うまでもなく、誰かからの許可はいりませんよ。
さあ、アンテナを張り巡らせて。
楽しみは自分で見つけましょう✨
10. 自分には信頼できる誰かが常に必要だ。
依存心の強い人が抱きがちな価値観。
「人に頼りたい」気持ちは誰にでもありますが、「一人では何もできない」という極端な考えは「何かを始めようとする意志」までも吸い取ってしまいます。
こんな考えは要注意⇩
・ 私は周りの許可や了解なしには行動できない
・ 私は一人では何もできない
・ 誰かに批判されるのは自分に悪いところがあるからだ
・ こんなこともできない私はやっぱりダメな人間だ
いやいや、ちょっと待って!!
ちょっとうまくいかないことがあっただけで自分を全否定してしまうのは飛躍のし過ぎではありませんか?
「ダメ」だったのは、問題が起きた時の『あなたの行動』であって、あなた自身が「ダメ」なわけではありませんよ。
もしかしたらあなたには全く非がなかったかもしれませんし。
もしも、誰かから批判を受けることがあっても気に病む必要はありません。
そもそも批判でもアドバイスでも、その人が主観を主張しているにすぎないのですから。
【この信念への処方箋】
批判やアドバイスがある度それに応えようとしていたのでは、いずれ矛盾が生じます。
全て受け止める必要はなく、その通りにするかどうかは自分で見極めます。
まず、あなたがあなた自身を信頼してあげてくださいね。

「不合理な信念」を合理化する
ここで挙げた『不合理な信念(irrational beliefs)』の中には、それこそ「何がいけないの?」と思うようなものがあったと思います。
そこが『価値観』の落とし穴。
誰もが持っているけどみんなそれぞれ違う。
自分の中では「みんなそうでしょ」「当たり前でしょ」と思っているけど、実はそうでもなかったり。
これが『価値観』。
ちなみに私は1.2の傾向が強く、時々5と6が顔を出しそうになるのをその都度修正している感じ。3.7.8については、メントレでずいぶん克服しました。
多いですか?😅 良いんですよ~!!
『価値観』そのものには良いも悪いもありませんし、持っていてはいけないということもありません。
その『価値観』が『呪縛』となり、良くない影響を与えているのであれば、その都度見直せば良いというだけのお話。
その為にも、世の中には『不合理な信念(irrational beliefs)』というものがあることを知り、自分のソレがどんなかを把握しておくのは大きな一歩です。
もし『不合理な信念(irrational beliefs)』に支配されていることに気付いたら・・・。
「そういうこともあるが、そうとも限らない」とか「・・・だったら良いな」などと付け加え、ふわっとさせてみましょう。
柔軟に、合理的に、がポイントです。
以前ご紹介した『考え方の癖』も実は『不合理な信念(irrational beliefs)』。
良かったらご参照ください ⇩⇩⇩
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